現代民俗学会第27回研究会

  • このエントリーをはてなブックマークに追加

趣旨

 日本の民俗学は長らく「美」の問題を正面から論じることをしてこなかった。むしろ意図的にこれを避けてきたようにも思われる。これは諸外国と比較して、日本民俗学の顕著な特徴のひとつである。例えばアメリカ民俗学では、1970年代にDan Ben-Amosが民俗(folklore)を、’artistic communication in small groups’ と、またDell Hymesが民俗学(folklore study)を、’ the study of communicative behavior with an esthetic, expressive, or stylistic dimension’と定義づけて以来、表現文化の「美的」な性格を論じるのは、民俗学の主要な研究関心であったと言えよう。あるいは同じ東アジアの中国、韓国などでも、文芸・工芸・舞踊・演劇などの「芸(artistic skill, performance)」は民俗学の最も民俗学らしい研究領域であった。

 日本でも民俗学で美を論じることが試みられていた時代があった。昭和2年に結成された民俗芸術の会はその代表的な組織であり、その結成にも少なからず関わった柳田國男は『郷土生活の研究法』(1935)で、よく知られた民俗資料の三部分類の心意現象のなかに「趣味」を位置づけ、「善と美はともにこの一般的趣味の下に包括されるもの」と述べている。この当時の「民俗芸術」という研究視点がもっていた可能性は、近年、真鍋昌賢らによって再評価が進められている。その系譜が途絶えた一つの要因は、後の民俗学が客観的・実証的な科学たることを標榜するなかで、価値の評価に関わることを徹底的に避けてきたことがあろう。柳宗悦らの民芸運動と民俗学が、趣味的・鑑定家的志向をめぐって袂を分かった経緯などにそれが表れている。

 私たちはここで、人びとの生活のなかに表れる美の問題に、新しい視点で挑んでみたいと考える。柳田の「趣味」の言葉にヒントを得て、これをものごとの良さや美しさを感じ取る能力(=感性)と捉えなおす。すると、それが特定の社会文化的な状況でどのように発現するのか、またそれに基づいて人びとが何を「美しいもの/良いもの」として選択してきたか、あるいは自らの生活を少しでも美しく豊かなものとするためにどのような技や知識を生み出し伝えてきたか、といった問題が民俗学の課題として立ち上がってくる。日々の生活実践としての「こだわり」や「工夫」のなかに美意識を見出し、それらが時代的・社会的な規範性をもちながらも、個人の創意工夫によって更新されていく様相は、狭義の表現文化に止まらず、民俗学が取り組むあらゆる研究領域のなかに見出せるであろう。こうした問題を広義の「美学」として論じる可能性を開きたい。(文責:俵木悟)

(現代民俗学会ホームページより引用)

開催概要

会期
2015年4月26日(日) 11:00~12:15
開催地
関東 > 東京都
会場
成城大学 3号館311教室[アクセス
〒157-8511 東京都世田谷区成城 6-1-20
メインテーマ
生活のなかの感性と美学
公式サイト
http://gendaiminzoku.com/meeting.html#meeting27
主催
現代民俗学会
ダウンロード

プログラム 内容

発表者

  • 「良い踊りの民俗誌―踊りの評価の文化的構成」
    俵木悟(成城大学)
  • 「今和次郎と田園生活―造形の観察と実践の場としての郊外」
    丸山泰明(元国立歴史民俗博物館)
  • 「生活の中の手工芸における美と感性の力」
    横川公子(武庫川女子大学名誉教授)
  • コーディネーター 俵木悟

その他のイベント情報

PageTop