東京歴史科学研究会 第49回大会・総会

開催概要

会期
2015年4月25日(土) ~ 4月26日(日)
開催地
関東 > 東京都
会場
明治大学グローバルフロント1F多目的室[アクセス
〒101-8301 東京都千代田区神田駿河台1-1
メインテーマ
女性の生存と労働―地域の戦後史―
公式サイト
http://www.torekiken.org/trk/blog/taikai/49taikai.html
主催
東京歴史科学研究会
備考
【参加費】600円

プログラム 日程

第1日目 2015年4月25日(土)

《総会》 10:00~(開場9:30)
 ※年会費を4500円に改定する提案を、委員会よりおこなう予定です。

《個別報告》 13:00~(開場12:30)

「戦国期室町幕府における別奉行制の展開―武家祈祷の事例を手がかりとして―」
石田 出

「徳川将軍の葬送と江戸の町」
佐藤麻里

「「白衣の勇士」か「疾患への逃避」か?―総力戦と精神神経疾患をめぐるポリティクス」
中村江里

「一九三三年から一九四三年のフランスにおける難民問題とユダヤ系フランス人―レモン・ラウル・ランベールの国民観―」(仮)
山本 耕

第2日目 2015年4月26日(日)

《委員会企画》 13:00~(開場12:30)

■女性の生存と労働―地域の戦後史― 
【趣旨文】
 女性を受動的な客体と見なす幻想は、現代社会において依然として根強い。また、女性の力を活用すると高言しながら、旧態然たる性別分業観を温存させ、矛盾を女性にしわよせする手口は、現政権を含め多数の先例がある。女性の生存と労働を、その実態に即して再検討すること。これは、隠蔽された社会構造の暗部を可視化するために、何度でも試みられなければならない課題である。

 東京歴史科学研究会では、2011年度の大会まで数度にわたり「新自由主義時代の歴史学」を基本テーマにすえ、労働や教育の問題、地域史研究や対抗運動の可能性などを論じてきた。2012年度以降は、東日本大震災と福島第一原発事件の経験もふまえ、「生存」の問題を主軸に企画をたてた。これらの大会で浮かび上がってきた論点は、競争原理や差別・排除の問題、あるいは代案としての共同性や救済される側の主体性、生存をめぐる主体間の葛藤など多岐におよぶ。これらの諸問題は今日、むろん後景に退いたわけではない。状況はむしろ悪化する傾向にさえある。

 以上のことを念頭に置きながら、今年度の大会では、「女性の生存と労働-地域の戦後史-」と題し、女性の多様な生存戦略を、地域の実態に即して多元的に明らかにしたいと考える。女性に焦点をあてた理由は、ともすれば受動的な客体とみなされ、そうした幻想がこれまでに、多数の有害な神話を流通させてきたからであり、性に関する様々なステレオタイプを再生産してきたからである。今回取り上げる「売春婦」や「パンパン」はその最たる例であるし、高度成長期の女性の就労や生活についても、その内実は一様ではない。それらを、国家や世界情勢との関係だけではなく、個々の生活領域に近接した次元でとらえなおすこと。今大会で「地域」と称する所以である。そうすることで、人間関係の諸相をリアルに浮き彫りにすると同時に、ジェンダーの視点を鍛え、性に対する多様な認識を得るきっかけとしたい。

 そこで、まず高柳友彦氏には「温泉観光地の戦後―高度成長期熱海温泉における女性労働力の歴史的変容―」と題して、戦後から高度成長期にいたる女性労働の諸構造を、熱海という地域に即して論じてもらう。戦前から開発が進む熱海には、温泉地特有の経済構造を背景にして、さまざまな女性が移り住んだ。そうした女性たちの内実を、経済史の観点から可能なかぎり省察していただく。

 次に、平井和子氏には「敗戦・占領を生き延びる地域と女性たちのエイジェンシー」と題し、熱海におけるRAAや占領軍「慰安所」の実態と、「パンパン」たちの姿、彼女たちを引きつけた熱海という地域を、同時代の御殿場との比較を通して、敗戦から売春防止法の施行(1958年)までの時期を中心に論じてもらう。米軍占領という構造的暴力の下で、性労働に携わる女性たちが自らの生存戦略を駆使するあり様と、「働く女の街」熱海の地域性が多角的に浮き彫りにされよう。

 これらの議論を通して、今日、安易な神話や一般論に堕することなく、具体的な個々の実像を地域の戦後史に位置づける適切な視座が得られれば幸いである。

「温泉観光地の戦後―高度成長期熱海温泉における女性労働力の歴史的変容―」
高柳友彦 

「敗戦・占領を生き延びる地域と女性たちのエイジェンシー」
平井和子

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