日本社会文学会2014年度秋季大会
日本近現代史という大きな歴史の視野のなかで見るとき、日本社会はいま歴史の岐路に立っていないだろうか。
2011年、東日本大震災と福島第一原発のメルトダウン事故から三年、復興もままならないなかで「フクシマ」は世界の文明史的困難の前面に押しだされている。これまで『遠野物語』や宮澤賢治など、多くの物語や詩を育んできた東北では、季節ごとにめぐる自然も、原発事故により避難した人たちも、とどまってそこに暮らす人たちも、廃炉へ向けてのあまりにも長いときのなかで、いまだに癒えることのない悲しみとともにたたずんでいる。
一方、このような被災地「フクシマ」から見る日本社会とは、何と大きく変わろうとしていることだろう。一年前の特定秘密保護法以降、国家安全保障会議の創設、そしてついに平和憲法および立憲主義を逸脱した集団的自衛権行使容認の閣議決定へと至っている。アジアでの戦争の記憶や、人類史上最悪ともいえる原発事故の現実を遠ざけたまま、再び新たな戦争の危機をはらんでいる。また、原発再稼働、原発輸出の動きも近づいている。それは未来から見るとき、まさにこの現在こそが日本社会の「歴史の岐路」と呼ばれるのではないだろうか。
この日本社会のなかで、文学は、どのような役割を果たしたらよいのか。今回の秋季大会(福島大学)は、2012年春季大会「「3.11」以後の社会と文学」(神奈川大学)のテーマを引き継いで開催する。福島の人々とともに、戦後派作家の埴谷雄高や島尾敏雄の故郷でもある「フクシマ」から見る日本社会を、被災地の現状を、文学の可能性を見つめていきたい。
秋季大会のテーマである「歴史の岐路と文学」は、来年30周年を迎える「日本社会文学会」の使命にもつながっていくであろう。
(代表理事 小林孝吉)
開催概要
- 会期
- 2014年11月8日(土) ~ 11月9日(日)
- 開催地
- 北海道・東北 > 福島県
- 会場
- 福島大学[アクセス]
〒960-1296 福島県福島市金谷川1番地 - メインテーマ
- 「歴史の岐路と文学――「フクシマ」から見る日本社会」
- 公式サイト
- http://ajsl.web.fc2.com/meeting-next.html
- 主催
- 日本社会文学会
プログラム 日程
【8日(土) 14:00~(開場13:30)】
シンポジウム「歴史の岐路と文学―「フクシマ」から見る日本社会」
・発表
- 澤正宏(福島大学名誉教授)「歴史の転換点と文学」
- 木村朗子(津田塾大学教授)「世界文学としての震災後文学」
- 齋藤貢(詩人)「震災とアムビヴァレントな言葉と」
・ディスカッサント
川村湊(法政大学教授)
・懇親会(シンポジウム終了後)
【9日(日)9:30~(開場9:00)】
・研究発表
- 木村政樹「「敗北」の文学」の解釈環境――「芥川龍之介」言説と階級論の交錯をめぐって――」
- 柳井貴士「又吉栄喜「ジョージが射殺した猪」論――〈米兵〉による語りと階層化される沖縄――」
・南相馬・小高町方面スタディツアー
(参加費4000円、11:00から貸切バスにて。18:00頃福島駅で解散予定)