古代文学会1月例会(第673回)

開催概要

会期
2016年1月9日(土) 14:00~17:00
開催地
関東 > 東京都
会場
大東文化会館 K-302[アクセス
〒175-0083 東京都板橋区徳丸2-4-21
東武東上線「東武練馬」駅北口 徒歩5分
公式サイト
http://kodaibungakukai.org/reikai-annai.html
主催
古代文学会

プログラム 内容

発表者:井上隼人氏
題目:『日本霊異記』の会話引用と訓読

要旨:
 説話の文章に検討を加える場合、阪倉篤義氏が指摘した歌と会話文との相関関係は、ひとつの指標になり得るものと思われる。阪倉氏によれば会話文とは「読者(聞き手)を、事件の具体的な場面にひきこむことができる」表現方法であり、『竹取物語』や『落窪物語』のようなつくり物語は対話形式の会話文を多く持つのに対し、『伊勢物語』や『大和物語』前半部、『土佐日記』のような歌物語・日記の会話文は独話的でその数も少ないという。このような相違の原因は、後者が歌を中心に構成されており、会話を積み重ねることで話の筋が複雑になることを避けているからだという(『文章と表現』角川書店、昭50・6)。氏の指摘を『日本霊異記』に当てはめた場合、全一一六話中、歌謡はわずか十首であるのに対し、会話文はおよそ五二〇例あり、収録説話の八割に会話文が認められる。各縁冒頭に主人公の紹介を掲げ、その人物の行動を通じて因果の理を説く『日本霊異記』において会話文が多く見られることは、その目的を最もよく伝える表現方法として選び取られたものと推測することができよう。
 このように、会話文は『日本霊異記』の文章表現上の特徴をなすと思われる要素だが、その研究は管見による限り、大久保一男「日本霊異記の『まうす』」(『國學院雑誌』八十四巻二号、昭58・2)が見出せるが、あまり活発に為されていないようである。そこで本発表では『日本霊異記』の会話文に注目し、引用形式の分類と会話内容の関わり、またそれぞれの訓読について検討を加えてみたい。なお本発表は、國學院大學の院生有志で行っている日本霊異記研究会の成果の一部である。

司会:山本大介氏

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