民俗芸能学会 第157回研究例会
開催概要
- 会期
- 2016年1月9日(土) 14:00~
- 開催地
- 関東 > 東京都
- 会場
- 早稲田大学6号館3階 演博レクチャールーム[アクセス]
〒169-8050 新宿区西早稲田1-6-1 - 公式サイト
- http://minzokugeino.com/meetings.html
- 主催
- 民俗芸能学会
- 協賛・後援等
- 参加費:200円(会員外の方もご参加いただけます。当日直接おいでください)
プログラム 内容
開場 13:30
神楽とは:娯楽?それとも儀礼?
発表者:平井暁子
司会:俵木悟
コメンテーター:久保田裕道
発表要旨:
神楽は、神のための儀礼舞踊と説明されながら、それとは全く異なる意味の民俗芸能の下位分野とされる。このような混乱の生まれた要因として、民俗芸能の定義が学術的な検証、規定によりなされたのではなく、行政主導で行われた伝統文化保護及び観光資源化のための枠組みであったからだと考えられる。これについては、既にこれまでの研究で明らかにされている。
近年、伝統文化に価値を付加する取り組みとして、ユネスコの文化遺産登録の活動が日本でも盛んに行われている。そのユネスコ本部のあるフランスでは、神楽は「Divertissements rituels(儀礼的娯楽)」であると説明される。日本語の民俗芸能とは、全く異なる訳語である。果たして神楽は、儀礼なのか、それとも儀礼から始まり、やがて宗教的意味の失われてしまった娯楽なのか。
神楽という語は、これまで学術的に規定されないまま、曖昧に用いられてきた。したがって、その音楽も規定されずに、その囃子があたかも芸術音楽であるかのように取り扱われてきた。しかし、実際に伝統的な神楽の上演の場に足を運んでみると、そこには人々を楽しませるだけのために演奏される芸術音楽とは異なり、宗教的要素が多く散見される。そこで耳にする音も、囃子だけではない。
そこで本発表では、神楽の音楽が取り上げられるときに、自動的に切り捨てられているこのような音も含め、神楽の音を整理する。そうすることで、神楽の研究上、音楽と認識されることなく除外されてきた音に光をあてることができ、更にそれらが儀礼上の重要な目的を持っていることがわかる。これらを総合的にみると、神楽は民俗芸能ないし儀礼的娯楽というよりもむしろ、「Rituels divertissants(娯楽的儀礼)」であることがわかる。