第8回 寺院資料調査研究報告「寺院が紡ぐ神道の思想と系譜」
各地の寺院に残る聖教・典籍のなかには、相当数の神道文献が含まれている。その多くは、真言密教系の御流神道・三輪流神道や、天台系の山王神道などの仏教圏由来の神道文献であり、そこには近代の神仏分離・廃仏毀釈によって破壊された、神仏習合の信仰世界が広がっているのである。今回の報告会では、各地寺院に所蔵される神道文献を採り上げ、その内容と伝来とを追究することを通じて、中世から近世に至る習合的神道思想の系譜を辿る。
開催概要
- 会期
- 2026年1月24日(土) 13:00~17:00
- 開催地
- 関東 > 東京都
- 会場
- 慶應義塾大学 三田キャンパス 北館3階大会議室
〒108-8345 東京都港区三田2-15-45
- メインテーマ
- 「寺院が紡ぐ神道の思想と系譜」
- 公式サイト
- https://jarsa.jp/jishiken202601
- 主催
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- 協賛・後援等
- 【共催】
●科学研究費補助金 基盤研究(A)「地方寺院経蔵の再生を基盤とする宗教文化圏の解明」(研究代表者:中山一麿/課題番号:25H00467)
●科学研究費基金 基盤研究(B)「両部神道の伝播と継承に関する総合的研究」(研究代表者:伊藤聡/課題番号:23K20425)
●科学研究費基金 基盤研究(B)「禅律拠点寺院蔵書の保存と聖教書誌学構築のための調査研究―両足院と称名寺を中心に」(研究代表者:高橋悠介/課題番号:25K00441) - 備考
- 事前申込不要、参加無料、一般聴講歓迎
- ダウンロード
プログラム 内容
司会:向村九音(公益財団法人元興寺文化財研究所)
- 『伊勢仏神伝記』について
伊藤聡(茨城大学 教授)
- 称名寺素睿本神祇書一結をめぐる問題
高橋悠介(慶應義塾大学 附属研究所斯道文庫 教授)
- 國學院大学図書館所蔵「御流神道六部」の周辺―真福寺大須文庫所蔵『日本記三輪流』理解の一助として―
大東敬明(國學院大學 教授)
- 善通寺本『麗気記』勘考――もうひとつの書誌的実装が語る神典註釈の形態
原克昭(弘前大学 教授)
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『伊勢仏神伝記』について
伊藤聡(茨城大学 教授)
伊勢二字とは、「伊」「勢」の二字を女・男に宛てる説で、中世の『古今和歌集』や『伊勢物語』の注釈より起こった。同説は次第に密教系の神道説(特に御流神道)に取り込まれてその秘説のひとつとなる。『伊勢仏神伝記』はその代表的な一書で、複数の写本が伝流する。内容は伊勢二字を女=胎蔵界・男=金剛界に配して諸仏・諸神を解釈するもので密教的性愛思想の影響が濃い。本書については、曾て拙著『中世天照大神の研究』(法蔵館、2011年)で紹介したが、より詳しい考察は他日を期した。本報告では、その後に得た知見も踏まえた基礎的な考察を行う。
称名寺素睿本神祇書一結をめぐる問題
高橋悠介(慶應義塾大学 附属研究所斯道文庫 教授)
(準備中)
國學院大学図書館所蔵「御流神道六部」の周辺―真福寺大須文庫所蔵『日本記三輪流』理解の一助として―
大東敬明(國學院大學 教授)
國學院大学図書館所蔵「御流神道六部」は、慶長3年(1598)頃に書写された『山王七社大事』『三種神祇巻』『神祇巻秘訣集』『御流霊気集』『内宮外宮口伝』『日本記当流巻』より構成される。このうち、『日本記当流巻』は、真福寺大須文庫所蔵『日本記三輪流』の前半と同内容である。これまで、『日本記三輪流』は称名寺聖教「素睿本神祇書一結」や、道祥が書写した神宮文庫所蔵「神道切紙」ほかとの関係が注目されてきた。本報告では國學院大学図書館所蔵「御流神道六部」を紹介・分析しつつ、中世後期~近世前期の両部神道/御流神道の展開のなかで捉え直してみたい。
善通寺本『麗気記』勘考――もうひとつの書誌的実装が語る神典註釈の形態
原克昭(弘前大学 教授)
近年の寺院資料調査研究によって、寺院における註釈・講述・講釈という営為・動態と連動して書承された神道資料群の解明が進展してきている。中世神道の代表的典籍『麗気記』をとりまく営為・動態および諸本に関しては、『麗気制作抄』をはじめ良遍『麗気聞書』や聖冏『麗気記抄』『麗気記神図画私抄』など聞書・抄物の形で本文を伴わない註釈資料として伝存する一方で、真福寺本『麗気記』正本・副本(無訓点本・訓点本)のごとく同一寺院の諸本からみた神典伝授の動態も窺測されている(真福寺善本叢刊〈第三期〉神道篇・第二巻『麗気記』臨川書店、2019年)。その点では、まさしく善通寺本『麗気記』は両者を兼ね備えた特異な装幀の伝本であることが確認された。本報告では、善通寺本『麗気記』の書誌的実装を通して、もうひとつの神典註釈の位相をあれこれと勘考する機会としたい。