企画展『織部と光悦Ⅱ-「光悦七種(異説)」赤筒茶碗 銘「有明」初公開-』

企画展「織部と光悦Ⅱ」

琳派の創始者といわれる本阿弥光悦は、陶芸・書・蒔絵など芸術全般にその才能を遺憾なく発揮しました。一方で、茶の湯においても活躍し、数々の光悦好みの茶道具を残しています。それらには、茶の湯の師古田織部からの影響が色濃く表れています。
今回は、芸術家としての織部の継承者・光悦に注目し、新発見の本阿弥光悦作の「光悦七種(異説)」「光悦十作」「千家中興名物」赤筒茶碗 銘「有明」(平瀬家伝来)を初公開いたします。そのほか、孫の光甫による「空中信楽」や、光悦に楽茶碗の製作技法を伝授した樂家2代常慶とその子3代道入(ノンコウ)の作品など50点展示いたします。この機会にぜひご鑑賞下さい。

開催概要

会期
2017年9月23日(土) ~ 2018年1月14日(日)
開催地
近畿 > 京都府
会場
古田織部美術館[アクセス
〒603-8054 京都市北区上賀茂桜井町107-2 地下1階 TEL 075-707-1800
市営地下鉄烏丸線北山駅下車 4番出口 徒歩3分
開館時間
9:30~17:30(入館は17:10まで)
休館日
12月29日(金)~1月4日(木)
公式サイト
主催
古田織部美術館
協賛・後援等
【後援】京都府、京都市、京都新聞、(公財)京都文化交流コンベンションビューロー
備考
入館料:大人 500円、大学生・高校生 400円、中学生以下 300円、団体(15人以上)100円引
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展示品の紹介

重文級の幻の茶腕、本阿弥光悦作 赤筒茶腕 銘『有明』を特別公開!

本阿弥光悦作 赤筒茶腕 銘『有明』

本阿弥光悦作 赤筒茶腕 銘『有明』

 8代将軍徳川吉宗時代の老中水野忠之や、江戸の書肆(出版社)横山藤七が所持し、「光悦七種(異説)」「光悦十作」「千家中興名物」に選ばれながら、300年間にわたりその所在が世に知られていなかった名物茶碗が、ついに発見された。→続きを読む

 「光悦七種」には2種類あり、1つは「不二山」(白、国宝)、「雪峰」(赤、重文)、「障子」(赤)、「鉄壁」(黒)、「毘沙門堂」(赤)、「雪片」(赤)、「七里」(黒)であり、もう1つは「加賀光悦」(赤、重文)、「雨雲」(黒、重文)、「時雨」(黒、重文)、「紙屋」(飴)、「鉄壁」(黒、焼失)、「有明」(赤)、「喰違」(黒)である。これは、江戸時代後期の『本朝陶器攷證』(金森得水著、資料添付)にみえる12碗が根拠となっている(「七里」は同書に記載なし)。また、『大正名器鑑』は「光悦十作」として、「有明」など上述の茶碗のうち8点と、「黒光悦」(黒)・「ヘゲメ」(赤、焼失)を挙げている。

 『(千家)中興名物記』には「光悦赤筒 水野和泉守/横山藤七/銘 有(明)胴に青替り有之」(/は改行)とあり、『本朝陶器攷證』には、「光悦茶碗高名の品」として、「有明 赤筒青火かはり有水野泉州公家士横山藤七」とある。有明は赤楽の筒状の茶碗であり、青い火替わり、つまり青味を帯びた窯変があると記されているのである。「有明」と書かれた箱は光悦自身が制作した共箱であることから、銘も光悦自身が、茶碗の景色を有明の月に重ねてつけたものであろう。

 同茶碗の箱書によると、江戸時代末期の大坂の豪商・平瀬露香が所持しており、後に京都の道具商・善田好日庵が愛蔵していた。そして平成27年、当館館長で宮帯出版社社長の宮下玄覇が入手した。宮下は、「300年の時を経て、同じ書籍出版に携わる者の手に渡ったことに不思議な縁を感じる」と語っている。

 平成28年、宮下は光悦茶碗研究の第一人者の林屋晴三氏に鑑定を依頼。その結果を林屋氏は、折から刊行を企画していた『光悦茶碗』(宮帯出版社)で、次のように述べている。「この茶碗は平成二十八年に初めて手にした名碗で、光悦が五十代後半から六十ぐらいに焼いた初期の作と推考する。ほかに例をみない釉景色で、しかしこの茶碗の造形上の最大の見所は裏側で「加賀光悦」と同様の縦の篦目(へらめ)をつけていることである。筋や面取篦の篦使いがまだ幼く、腰はまるく作られ、これは後に実ってくるものと共通点がある」。林屋氏は書籍の刊行を見ることなく今年4月に逝去されたが、この記述から、同茶碗が「新発見」のものであることが裏付けられた。

光悦茶碗「有明」の特徴

  1. 形が撫菱形(なでびしがた)、つまり丸みを帯びた菱形である。現存で唯一。
  2. 細い縦篦(べら)、面取篦、鉈目(なため)状の篦などの技巧が駆使されている。
  3. 高台より6カ所に放射状にかすかに篦を入れている。現存で唯一。
  4. 口縁部に1カ所、飲み口のような深い削り込みを入れており、ここは1mm強まで薄くなっている。現存で唯一。
  5. 色は赤というより淡紅色、つまりピンク色である。「加賀光悦」「弁財天」と同じ。
  6. 黒(暗緑)釉のなだれは、現存で唯一。これは窯のなかで自然になだれたのではなく、筆で縦線を波状に描き、水墨画の「破墨」のようにしたものである。
  7. 正面とその左側では、飴釉が透明釉と混ざり美しい黄釉となっている。なお「有明」の銘は、この釉景を月の光に見立てて光悦がつけたもので、また箱も本人が作成している。

その他の展示品

  • 樂家2代常慶造 香炉釉輪花皿
  • 樂道入(ノンコウ)造 黒楽茶碗 銘「出額」
  • 本阿弥光甫(空中)造 空中信楽 肩衝茶入
  • 角倉素庵筆 書状・灰屋紹益筆 書状ほか
    光悦好みの作品9点展示(計50点)

参考文献

茶碗の写真・論考が、『幻の光悦作 赤筒茶碗 銘「有明」』(古田織部美術館発行・宮帯出版社発売)に掲載されます。定価300円(+税)。

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