第1回 日本宗教文献調査学 合同研究集会
今日に至る寺社資料(聖教・古文書)調査の淵源を尋ねますと、近代的な意味においてのそれは、黒板勝美氏が主導した東寺・醍醐寺・金剛峯寺等の調査研究、および『大日本古文書』『国史大系』の刊行等といった基礎的資料・情報の普及に求められるとしてもよいでしょう。それ以後、数多の寺社の宝蔵がひらかれ、たとえば『髙山寺資料叢書』『真福寺善本叢刊』『醍醐寺文書聖教類目録』といった資料叢書・目録類が学界にもたらされてきました。このような成果が日本史学・日本語学・訓点語学・日本文学に与えた影響については、いま改めて言を費やす必要もないほどに多大です。そして現在においてもなお、日々、日本各地の蔵がひらかれ、そこに収蔵される様々な文化財の存在や意義が明らかにされつつあります。
しかしながら、調査団の母体が「科研費による調査」「博物館・文書館が中心となった自治体主導の調査」「寺社が主導する調査」など多岐にわたりうることを原因のひとつとして、各調査団が明らかにしえた情報は他の調査団との間で充分に共有されているとは言いがたい状況にあるのではないでしょうか。現今の研究の進捗によって、往時の寺々は僧侶の移動や典籍の貸借によって広域的な知のネットワークを形成していたことがより明らかになりつつありますが、そのこととむしろ対照的であると言ってもよいかもしれません。
このような現状に鑑み、寺社に収蔵される文献等の文化財を調査・研究することについての〈知見〉を可能な限り共有することを目指し、「日本宗教文献調査学 合同研究会」を立ち上げることといたしました。ここでいう〈知見〉には、個別の寺社に存する文化財についてはもちろん、調査を行い、それを公開する際の技術的側面に関わる情報や、これから調査に従事しようとする若い世代の研究者たちも含めた人びとの繫がりも含んでいます。当面は、科研費等に基づく宗教文献調査団のいくつかが共同し、寺社に残る文化財についての知見と、人や技術とを繫ぐハブ組織としての合同研究集会を企画・運営してゆく所存です。ご関心を同じくする皆さまのご参集を切望します。
開催概要
- 会期
- 2017年9月23日(土) ~ 9月24日(日)
- 開催地
- 関東 > 東京都
- 会場
- 慶應義塾大学 北館1Fホール[アクセス]
〒108-8345 東京都港区三田2-15-45 - メインテーマ
- 公開シンポジウム ①「文化財の複製とデジタルアーカイヴス」 ②「聖教が繫ぐ-中世根来寺の宗教文化圏-」
- 公式サイト
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- 主催
- 科研費(基盤B)「新義真言系聖教の形成と教学的交流に関する基礎的研究」(代表:宇都宮啓吾)、【共催】科研費(基盤S)「宗教テクスト遺産の探査と綜合的研究-人文学アーカイヴス・ネットワークの構築」(代表:阿部泰郎)、科研費(基盤B)「金剛寺聖教・文書類を基盤とした社寺ネットワークの解明とその蔵書史的研究」(代表:海野圭介)、科研費(基盤B)「再興・布教から霊場化へ-増吽関連の寺院経蔵調査を中心に-」(代表:中山一麿)、科研費(基盤C)「称名寺聖教を中心とした東国寺院における唱導資料と説話に関する研究」(代表:高橋悠介)、歴史的典籍NW事業「紀州地域に存する古典籍およびその関連資料・文化資源の基礎的研究」(代表:大橋直義)、国文学研究資料館 歴史的典籍NW事業
- 備考
- 入場無料・一般来聴歓迎
- ダウンロード
プログラム 内容
9月23日(土)13:00~17:30(12:00 受付開始)
基調講演 13:00~14:00
醍醐寺に伝わる顕・密聖教
永村眞氏(日本女子大学 名誉教授)
公開シンポジウム① 14:30~17:30
「文化財の複製とデジタルアーカイヴス」
- 複製古文書作製による文化伝承推進
吉田謙一氏(富士ゼロックス西日本) - 3Dプリンターによる仏像レプリカの作成と活用
大河内智之氏(和歌山県立博物館) - OCR技術の歴史的資料への応用-系図血脈資料からくずし字まで
大澤留次郎氏(凸版印刷) - 系図を対象としたデータベースシステムの構築
村川猛彦氏(和歌山大学) - 宗教文献研究のためのテクストと画像の効果的な共有に向けて
永崎研宣氏(人文情報学研究所)
司会:宇都宮啓吾氏(大阪大谷大学)
9月24日(日)10:00~17:30(9:30 受付開始)
ポスターセッション 10:00~12:00
各地の寺院経蔵文献調査のポスター報告
展示・紹介ブース 10:00~12:00
- 古典籍展観ブース
- デジタル・複製技術 体感ブース
- 報告書・目録等の頒布(販売)ブース
(一部、23日からオープンします)
公開シンポジウム② 12:30~17:30
「聖教が繫ぐ-中世根来寺の宗教文化圏-」
司会:宇都宮啓吾氏(大阪大谷大学)
全体の目論見/智積院聖教とその関連聖教をめぐって
【KeyNote】
- 覚城院所蔵の中世期写本と根来寺・真福寺
中山一麿氏(大阪大学)
【報告】
- 天野山金剛寺の聖教と周辺寺院
海野圭介氏(国文学研究資料館) - 頼瑜時代の仁和寺
横内裕人氏(京都府立大学) - 根来寺関係聖教からみる真福寺大須文庫聖教の多元・重層的特質
阿部泰郎氏(名古屋大学) - 聖教の伝来と大伝法院・根来寺
苫米地誠一氏(大正大学)
コメンテーター:
永村眞氏(日本女子大学 名誉教授)、中川委紀子氏(根来寺文化研究所)