大阪大学古代中世文学研究会・寺院資料調査研究報告 合同特別例会「知られざる古筆・断簡と寺院経蔵―瓶井山禅光寺安住院―」

大阪大学古代中世文学研究会・寺院資料調査研究報告 合同特別例会「知られざる古筆・断簡と寺院経蔵―瓶井山禅光寺安住院―」

 寺院経蔵にはその寺院の歴史と共に綿々と蓄積されてきた古典籍群が収蔵されている。その多くは僧の修学に資する内典で占められるが、一部はおよそ仏道修行とは無縁と思しい古典籍が含まれることも珍しくは無い。今回取り上げる瓶井山禅光寺安住院は、所謂聖教類が多く残る一方で、歌集・物語・古写経などの古筆切・断簡資料が収蔵されている。これらは一地方寺院の収蔵物としては質・量ともに想定を超えるものであり、その流入経路の解明は、古典籍の享受史や分布図に新たな視点を加える可能性があろう。
 今回の研究会では、まずはこれまで各界に知られること無く経蔵内に埋もれていた歌集・物語・古写経などから、研究資料として高い価値を有するものを中心に報告する。

本報告会は、オンラインミーティングツールZoomを使用しての視聴が可能です。
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開催概要

会期
2021年11月6日(土) 13:00~18:30
開催地
近畿 > 大阪府
会場
大阪大学 豊中キャンパス 文法経本館2階大会議室(上限50名)[アクセス
〒560-8532 大阪府豊中市待兼山町1-5
メインテーマ
「知られざる古筆・断簡と寺院経蔵―瓶井山禅光寺安住院―」
公式サイト
https://jarsa.jp/jishiken202111
主催
大阪大学古代中世文学研究会、科学研究費補助金 基盤研究(A)「地方基幹寺院に於ける文献資料調査と経蔵ネットワークの研究」(研究代表者:中山一麿/課題番号:19H00529)
備考
事前申込不要、参加無料、一般聴講歓迎
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プログラム 内容

開会の辞 滝川幸司(大阪大学 教授)

趣旨説明 中山一麿(大阪大学 招へい研究員)

研究報告

〔総合司会〕落合博志(国文学研究資料館 教授)

  • 安住院蔵『源氏物語』断簡をめぐって
    松本大(関西大学 准教授)
    〔司会〕松本成葉(大阪大学大学院 博士前期課程2年)
  • 安住院蔵『古今集』・『拾遺集』・『和漢朗詠集』・『原中最秘抄』断簡から見えてくるもの
    小林理正(大阪大学大学院 博士後期課程)
    〔司会〕飯田実花(大阪大学大学院 博士前期課程2年)
  • 安住院蔵『西行物語絵巻』について ―その本文と絵と独自異文をめぐって―
    山﨑淳(武庫川女子大学 教授)
    〔司会〕川渕紗佳(大阪大学大学院 博士前期課程2年)
  • 安住院・善通寺等蔵『新浜木綿和歌集』断簡について ―撰者良宋の伝、熊野社・『浜木綿和歌集』との関係など―
    海野圭介(国文学研究資料館 教授)
    〔司会〕黄夢鴿(大阪大学大学院 博士後期課程2年)

全体討議

〔司 会〕落合博志
〔登壇者〕松本大・小林理正・山﨑淳・海野圭介・中山一麿

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合同特別例会開催の経緯について

滝川幸司(大阪大学 教授)

 大阪大学古代中世文学研究会は、古代・中世文学を研究対象とする大阪大学大学院の院生・修了生を中心に独自の研究活動を行う場として、伊井春樹先生(現大阪大学名誉教授)によって1984年に設立された。会誌『詞林』の刊行、月例の研究発表会を中心として活動している。今回、中山一麿氏の寺院資料調査研究報告との合同特別例会を開催する運びとなった。中山氏を含め発表者は本研究会の会員で、その縁もあり合同開催に至ったのである。安住院に所蔵される、多様な資料を用いた報告は、本会員を始め多くの方々に刺激的であり且つ有益であると確信している。

安住院蔵『源氏物語』断簡をめぐって

松本大(関西大学 准教授)

 瓶井山禅光寺安住院には、鎌倉期の書写と思しき、二種の『源氏物語』断簡(夕顔巻・東屋巻)が蔵されている。夕顔巻は全体の5分の1程度が残り、本文系統としては別本と認められる。東屋巻は墨付3丁を残すのみであり、定家本系統の本文を見せる。両本は、必ずしも十分な残存状況とは言えないものの、ともに完本であった頃の姿を窺い知ることが出来る点で、他の『源氏物語』断簡資料とは一線を画す存在である。これまで当該本については、大山仁快氏による報告があるのみで、詳細な分析は施されて来なかった。そこで今回の発表では、両本の性格を明らかにした上で、現存諸本における両本の位置付けを示すことする。

安住院蔵『古今集』・『拾遺集』・『和漢朗詠集』・『原中最秘抄』断簡から見えてくるもの

小林理正(大阪大学大学院 博士後期課程)

 瓶井山禅光寺安住院にはさまざまな歌集・物語・古写経の古筆切・断簡が伝わっており、今回注目する『古今集』・『拾遺集』・『和漢朗詠集』・『原中最秘抄』もその中の一部である。各断簡の伝称筆者は、『古今集』が大覚寺義俊、『拾遺集』が鷹司基忠とするが、そのほか二点には極書・極札がなく、詳らかでない。とはいえ、これら四断簡は、それぞれ書写形態・本文異同・ツレ本との関係、という点において整理・検討すべき問題を有しており、研究史上、価値ある資料といえる。本報告では、和歌および詞書の書写形態、本文揺動の有り様、ツレ本の実見調査という視座からから見えてくるものについて考えてみたい。

安住院蔵『西行物語絵巻』について―その本文と絵と独自異文をめぐって―

山﨑淳(武庫川女子大学 教授)

 瓶井山禅光寺安住院には『西行物語絵巻』が蔵されている。中世制作とおぼしい点、寺院所蔵の報告が少ない『西行物語』では珍しい存在である点など、安住院所蔵文献の中で目を引くものと言える。
 もっとも本絵巻は完本ではない。残念ながら現存するのは物語の後半部分であり、さらに脱落・錯簡もある。しかしながら、C類(采女本系)伝本の報告が多い『西行物語絵巻』において、本絵巻がA類(略本系)に属することは、『西行物語』の本文や絵を考えるに当たり、有益な情報を提供してくれることを期待させる。まずは丁寧に本文や絵を分析することが求められるだろう。
 本発表では、本文がA類の中でどのように位置付けられるのか、絵からどういうことが読み取れるのか、そして、他の『西行物語』に見られない特徴は存在するのか、といった点を検証する。

安住院・善通寺等蔵『新浜木綿和歌集』断簡について―撰者良宋の伝、熊野社・『浜木綿和歌集』との関係など―

海野圭介(国文学研究資料館 教授)

 瓶井山禅光寺安住院と五岳山善通寺には、後醍醐天皇を伝称筆者とする軸装の古筆断簡が伝わっている。前者は幕末に施入されたもので、後者もやはりそれに近しい時期の施入のように思われる。両寺の修学の歴史を伝える資料ではないが、書写された内容は散佚歌集の『新浜木綿和歌集』で、和歌史研究の上では重要な資料であり、また、宗教者と和歌文芸の関わりを考える上でも興味深い作品と言える。公共機関や美術館等の所蔵ではなく、目に触れる機会も多くはないと思われるため、他に確認できた個人蔵断簡一葉と併せて、書写内容の検討を行い、併せて古筆切の検討から見えてくる、撰者の伝記的側面、奉納先や先行する歌集との関係といった『新浜木綿集』をめぐる基礎的な事柄についても改めて考えてみたい。

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